10.羽住一斗という男

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 きっと修太郎(しゅうたろう)なら優しく日織(ひおり)を見守りながら流せる、「妄想脱線娘」ぶりなのだが、十升(みつたか)には斬新すぎて付いて行ききれない。  何と相槌(あいづち)を打てばいいのか分からないままに日織の話を聞いていたら、 「それと……青空をバックにした皇帝ダリアがすっごくすっごく綺麗だったのですっ。私が小人だったらきっと、あのお花をスカートにするのになぁとか考えてしまって、あちこちでついつい立ち止まってしまってました」  最初はギリギリに着いてしまったことをしゅんとして謝っていたはずなのに、道すがら感動したものを思い出していたら、つい前のめりになってしまった日織だ。  その迫力に圧倒された十升(みつたか)が、 「ひお……塚田(つかだ)さん?ってさ、元々そんな感じだったっけ?」  と聞いてしまったのも無理はないだろう。  何しろ、十升(みつたか)のイメージの中の日織は、もう少しおとなしい女の子だったのだから。  もしいま目の前にいるのが藤原(ふじわら)――もとい塚田(つかだ)日織の本来の姿だとしたら、十升(みつたか)は日織のことを何にも分かっていなかったんだと改めて実感してしまう。
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