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「それで……今日は羽住酒造のこと、色々教わってきたのですっ!」
仕事を終えて、修太郎と羽住酒造近くの公園で待ち合わせをして。
修太郎の愛車・アルファードの助手席に乗り込んでシートベルトをするなり、日織が勢い込んでそうまくし立ててきた。
***
売り子をするにしても、ある程度は羽住酒造の実情を知っておいて欲しいというのが、雇用者側の考えだったらしい。
日織が、一斗に手を引かれて社屋内――販売ブースも兼ねているらしい酒蔵とは別棟の建物――に入ると、程よく空調の効いた室内に、一斗と十升の父・善蔵が待っていた。
一瞬、善蔵も彼の長子である一斗同様和装のように見えた日織だったけれど、よく見ると善蔵の方は洋装に『羽住酒造』と襟字の入った法被を羽織っているだけで。
濃紺のその法被、よく見ると白く抜かれた腰柄は、「酒造」という文字が角字(正方形の文字)で連ねられている洒落たデザインだった。
売り子をする際には自分もその法被を羽織ることになるのだと言われて、とても嬉しかった日織だ。
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