2.同窓会

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 同窓会は3月の半ばに開催された。  まだまだ冷え込む折とは言え、ホテル内は空調が効いていて寒くないため、みんな羽織ってきたコート類は受付付近のクロークに預けて、会場内ではそこそこ軽装で。 「藤原(ふじわら)がこういう席に顔を出すなんて、すげぇ意外だったんだけど」  胸に〝羽住(はすみ) 十升(みつたか)〟と書かれた名札をつけた男性に声をかけられて、日織(ひおり)は思わずビクッとなる。  ネイビーのコーチジャケットとパンツに、白のロングTシャツを合わせた、割とカジュアルな服装の彼は、子供の頃に日織をよく揶揄(からか)ってきた、苦手な男の子だ。  ツーブロックにラフなスパイラルパーマを当てた、ブラウン系の髪。  子供の頃は染めたりしていない黒髪を、かなり短めのスポーツ刈りにしていたから随分印象が違っていて、名札を目にするまでは誰か分からなかった。  けれど、よく見ればいわゆるソース顔のその面差しに、幼い頃の面影がある。  一般的に見ればハンサム、なんだと思う。  でも日織には醤油顔系の修太郎(しゅうたろう)の方が何倍もかっこよく見えるし、性格だって修太郎の方が優しくて一緒にいて居心地がいい。  結婚していれば今の名前のそばにカッコ書きで旧姓も記すように言われていたので、日織のワンピースの胸元にはちゃんと〝塚田(つかだ)(藤原)日織〟と明記してある。
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