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「かなり少ないって……実際には何本くらい作っていらっしゃるのですか?」
純米吟醸波澄の出荷数が年間六千本。それでも市場に潤沢には卸せないのだと善蔵がこぼしていたのを思い出した日織だ。
それより少ない本数とは何本ぐらいなんだろう?と純粋に思ってしまった。
「年間二百いきません」
六千本でも限られた場所にしか卸せないらしいのに、二百本では流通自体無理だと言われても納得だ。
「あの、でも……どうしてそんな……」
「少ない数しか作れないのか?って思ったんでしょう? それはね、大吟醸の波澄が、〝雫取り〟にこだわった〝雫酒〟だからだよ」
雫取りは醪を酒袋に入れて吊るし、一切の力を加えずに長時間かけて一滴一滴重力で自然に落ちる雫酒を集めた希少なお酒のことだ。
日織はそれを以前懇意にしている酒屋さんで聞いたことがある。
雫取りをした雫酒は、香りの華やかさを追求した大吟醸の〝極み〟と言われているのだ、とも。
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