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一斗は十升よりそういうハードルが低めなのか、十升みたいに〝わざと〟ではなく〝素で〟こういうことをしてこようとする節がある。
ある意味そちらの方が問題ありな気がしてしまった日織だ。
「どうしても! ダメなのですっ! 修太郎さんを悲しませることはしたくないのですっ!」
自分を信頼してここに送り出してくれている夫を裏切るなんて、日織には出来ない。
「え〜。お堅いなぁ、日織ちゃんは。でも、実際は僕に頭撫でられるの、嫌いじゃないでしょう? っていうかむしろ好きだよね?」
窺うように間近でじっと見下されて、
「好きなものを好きだと思うのは悪いことなの? 我慢しなきゃダメなの?」
春風みたいにのほほんとした雰囲気でそう畳み掛けられた日織は、一瞬グッと言葉に詰まってしまう。
「ダ、メだと思うのですっ。自分はよくても誰かを傷つけるようなことは……しちゃいけないのですっ。では逆にお聞きしたいのですが、一斗さんは――」
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