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実のところ飄々として捉え所のない一斗が、今まで生きてきた中で本気でお付き合いしても良いと思えた女の子は、日織ぐらいしかいなかったのだ。
(誰にも話したことないけどね)
十升が日織をバイトに誘ったと聞いて、「でかした、弟よ!」と思ったのも束の間、彼女が結婚していると聞かされた時のショックと言ったら。
(実際に日織ちゃんの口から告白されるまで信じたくなかったぐらいだよ)
なんて思っているなんておくびにも出さなかった一斗だ。
「そうですねっ。修太郎さんに出会う前だったらあるいは」
クスクス笑いながらそう言って、日織が「あっ、でも……」と続けた。
「ん?」
「一斗さん、眼鏡を掛けられたのはいつですか?」
聞けば「ここ一年ぐらいかな」と返る。
「じゃあ、私、やっぱり修太郎さんに出会うまで恋はしないままだったと思いますっ!」
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