13.好きなものを好きだと思うのは悪いことなの?

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 実のところ飄々(ひょうひょう)として捉え所のない一斗(いっと)が、今まで生きてきた中でお付き合いしても良いと思えた女の子は、日織(ひおり)ぐらいしかいなかったのだ。 (誰にも話したことないけどね)  十升(みつたか)が日織をバイトに誘ったと聞いて、「でかした、弟よ!」と思ったのも束の間、彼女が結婚していると聞かされた時のショックと言ったら。 (実際に日織ちゃんの口から告白されるまで信じたくなかったぐらいだよ)  なんて思っているなんておくびにも出さなかった一斗(いっと)だ。 「そうですねっ。修太郎(しゅうたろう)さんに出会う前だったらあるいは」  クスクス笑いながらそう言って、日織(ひおり)が「あっ、でも……」と続けた。 「ん?」 「一斗(いっと)さん、眼鏡を掛けられたのはいつですか?」  聞けば「ここ一年ぐらいかな」と返る。 「じゃあ、私、やっぱり修太郎さんに出会うまで恋はしないままだったと思いますっ!」
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