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(あの男が前に日織さんが話していらした和装が似合うとかいう……?)
目が合ったので仕方なく会釈をしたら、それを受けたように向こうも柔和な笑みを浮かべて修太郎に軽く頭を下げてきた。
(外面は良さそうだけど、腹に一物も二物も抱えてそうな男だな)
自分のことを思いっきり棚上げして、そんなことを思ってしまった修太郎だ。
「あのっ! 一斗さーん! 今日は貴重なお酒を飲ませてくださって、どうも有難うございましたっ! 私、すっごくすっごく幸せだったのですっ♥」
修太郎らのやり取りに気付いた日織が、修太郎の胸元から顔を上げると、ニコッと笑って無意識に眼前の夫へ嫉妬の火種をまき散らす。
修太郎は〝一斗さん〟と呼ばれたいけすかない優男を見つめながら、腕の中の日織に「……お酒?」とつぶやいた。
以前、「僕のいないところで飲酒をなさってはいけませんよ?」と噛んで含めるように言い聞かせたはずなのに、どういうことでしょうね?と思わずにはいられない。
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