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「って言うかお前、まだその口調直ってねぇのな?」
ククッと喉の奥で笑われて、日織はすごく嫌な気持ちになる。
そう。この人もだけど、他のみんなだってそうだった。
自分でもこの口調が他の子達とは違うと分かっていても、幼い頃からずっとそういう喋り方で、直そうと思ったら喋れなくなってしまって。
だったら喋らなくてもいいかなと口を閉ざしていたら、「何で喋らないの?」と責められて。
日織にとって、子供の頃の思い出はそんなのばかりなのだ。
どの口が〝幼なじみ〟だなんて馬鹿なことを言うんだろう?
「なに? マジで忘れてるわけ? 藤原、子供ん時、俺ん家の酒蔵によく親父さんに連れられて来てたじゃん? 親たちが話し込んでる間、俺、兄貴と一緒にお前の暇つぶしに付き合ってやっただろ? 覚えてねぇの?」
酒蔵で、よく遊んでやっただろ?みたいにほのめかされて、日織は我慢出来なくなる。
「俺、それ以外でも結構お前のこと気にかけて可愛がってやってたと思うんだけど?」
日織は、無神経にもそんなことを次々に言い募ってくる羽住をキッ!と睨み付けた。
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