447人が本棚に入れています
本棚に追加
「一斗さんのこと……ですか? はい、十升と区別するためにずっと……彼のお兄さんのことはお名前で呼ばせて頂いています。――子供のころからそうなので」
日織が「それが何か?」と言いたげなキョトンとした顔で自分を見上げてきて。修太郎は思わず溜め息を落としたくなるのを必死でこらえた。
百歩譲って日織があの〝和装眼鏡男〟のことを下の名で呼ぶのは許すとしよう。だが、問題は――。
「まさかとは思いますが一斗さんとやらも貴女のことを――」
ソファに腰掛けたままの日織の前にスッとひざまずくと、修太郎は目線を日織のそれと合わせるようにして問いかけた。
日織は一瞬だけそんな修太郎の様子に息を呑んでから「えっと……ひ、〝日織ちゃん〟って呼ばれていますけど……ダメですか?」と眉根を寄せる。
修太郎は間髪入れずに「駄目に決まっているでしょう!」と吐き捨てて、日織の肩をつかんでしまっていた。
最初のコメントを投稿しよう!