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どちらも地元組。
未だ実家住まいの日織だ。
家に行けば会えるのは知っていたけれど、いざそうしようと思うと、何だか二の足を踏んでしまって行けなかったんだ、とボソリとつぶやかれて、日織は「え?」と思う。
あの強引だった羽住の言葉とは思えなかったからだ。
「あ、あのっ。今のって一斗さんのお話ですか?」
羽住とどこか似た面差しの、だけど始終柔らかな物言いで自分に接してくれていた年上の男の子を思い浮かべて恐る恐る聞けば「は? なんでそこで兄貴? どう聞いても俺の話だろ」と返されて、益々混乱してしまう。
「だって……羽住くんは」
――そんなキャラではなかったはずなのですっ。
そう続けようとしたけれど、じろりと恨めしそうな目で睨まれて、言えなかった日織だ。
「あのさぁ。なんで同級生の俺は〝羽住くん〟で、兄貴は名前呼びなわけ? 俺のことも十升って呼んで欲しいんだけど」
そんなことを言われても、日織にとって羽住くんは羽住くんだ。
それ以上でも以下でもない。
「羽住くんは羽住くんなのですっ」
日織が、握られたままの手をもう一方の手で払い除けようとしながら言ったら、「お前ってホント、相変わらず強情だよな」と、日織を握る手に力を込めながら羽住が苦笑した。
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