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「――でな、今度俺んトコの蔵と、いくつかの蔵で集まって酒まつりをすることになってさ」
結局あの後、手を離してもらえないままにそばで話すうち、話題が自然日織も好きな日本酒の話になって。
「うちの『波澄』、藤原も飲んだことある?」
蔵の屋号である「羽住」を、文字違いとはいえ商標名に冠したそのお酒は、羽住酒造の看板商品だ。
「私、日本酒は大吟醸が特に好きなんですけど……羽住くんのところの『波澄』はどれも純米吟醸酒なので大吟醸以外も美味しいですっ。先日6割の吟醸酒をいただいたんですけど、キリッとした辛口で、お食事にすごく合いましたっ」
修太郎の言いつけを守って、会場で振る舞われるお酒は飲まないようにして、代わりにソフトドリンクを飲みながら。
バイキング形式になった料理の中からサラダやローストビーフなどを取り分けて食べていたら、羽住に「藤原、お前、酒、飲めねぇの?」と手元のウーロン茶を見つめられた。
「の、飲めないわけではないのです……」
ただ、会場に用意されたアルコールが、ビールやワインやカクテル系ばかりだったから、飲んではいけないと判断しただけ。
そう言ったら「ん? 何だったら飲めるわけ?」と聞かれた。
それで仕方なく「日本酒なら」と答えたら「何だそれ。特異体質かよ!」と驚かれて。「じゃあさ、うちの『波澄』は飲んだことある?」と聞かれたりして、その流れで日本酒談義になったのだ。
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