2.同窓会

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*** 「――でな、今度俺んトコの蔵と、いくつかの蔵で集まって酒まつりをすることになってさ」  結局あの後、手を離してもらえないままにそばで話すうち、話題が自然日織(ひおり)も好きな日本酒の話になって。 「うちの『波澄(はすみ)』、藤原(ふじわら)も飲んだことある?」  蔵の屋号である「羽住(はすみ)」を、文字違いとはいえ商標名に(かん)したそのお酒は、羽住(はすみ)酒造の看板商品だ。 「私、日本酒は大吟醸が特に好きなんですけど……羽住(はすみ)くんのところの『波澄』はどれも純米吟醸酒なので大吟醸以外も美味しいですっ。先日6割の吟醸酒をいただいたんですけど、キリッとした辛口で、お食事にすごく合いましたっ」  修太郎(しゅうたろう)の言いつけを守って、会場で振る舞われるお酒は飲まないようにして、代わりにソフトドリンクを飲みながら。  バイキング形式になった料理の中からサラダやローストビーフなどを取り分けて食べていたら、羽住(はすみ)に「藤原(ふじわら)、お前、酒、飲めねぇの?」と手元のウーロン茶を見つめられた。 「の、飲めないわけではないのです……」  ただ、会場に用意されたアルコールが、ビールやワインやカクテル系ばかりだったから、と判断しただけ。  そう言ったら「ん? 何だったら飲めるわけ?」と聞かれた。  それで仕方なく「日本酒なら」と答えたら「何だそれ。特異体質かよ!」と驚かれて。「じゃあさ、うちの『波澄(はすみ)』は飲んだことある?」と聞かれたりして、その流れで日本酒談義になったのだ。
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