16.酒蔵祭り

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(奥の方の酒造メーカーも来てるだろうか)  いわゆる市町村合併で我が自治体に組み込まれた新・市内の酒蔵が狙い目だと思った修太郎(しゅうたろう)だ。  旧・市内にある酒蔵の酒ならば、羽住(はすみ)酒造のように、蔵元にも比較的足が運びやすいが、前者はそうはいかない。  加えて小さな蔵本だったりすると、卸先(おろしさき)自体限られていたりして、行きつけの店や、ましてやスーパーなどでは見かけない酒なんかも結構あるのだ。  そういうのを見つけて買っておいたら、きっと日織(ひおり)は喜んでくれるだろう。 (あ、でも、待てよ?)  もしかすると近隣の酒蔵も、普段は酒店にあまり卸さないような限定品の酒をイベントだから、と特別に売っている可能性だってないとは言えないではないか。  修太郎は少し考えて、出店しているブースを片っ端から覗いてみることにした。  塚田(つかだ)修太郎という男、言うまでもなく大好きな妻・日織のためならば、どんな労力も(いと)わないのである。
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