445人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
「わ、私たち……実はまだ……そのっ、きょ、挙式をしていないので……それで」
うつむきながら手にしたウーロン茶をひと口含んだら、「は?」と聞き返される。
挙式と別居との兼ね合いが、羽住の中では結びつかないみたいだ。
「じゃあまだ結婚してねぇってこと? ――いや、でも……名前……」
胸元の名札をマジマジと見つめられて、日織は思わずそこを手でギュッと隠した。
何だか名札の下の胸を見られている気がして落ち着かない気持ちがしたから。
そんなことはないと分かってはいるのだけれど、修太郎以外の異性とふたりで話しているという後ろめたさが、日織の心に仄暗い影を落とす。
会場を見渡せば、同級生たちは皆、思い思いのグループを作ってそのグループごとに盛り上がっているように見える。
ホテルの大ホールを貸し切っての同窓会は、ドリンクや食事はバイキング形式になっていて、そこから勝手に自分たちの座っている席まで飲食物を持ち運ぶ方式。
各々に座る席がほぼ固定化されてしまった今となっては、よそのグループに入れてもらうのは困難に見えて。
最初のコメントを投稿しよう!