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気まずさを感じながらも、日織は会場の隅っこ。
羽住とともに2人掛けの席に横並びに腰掛けて、ソワソワと視線を彷徨わせる。
「にゅ、入籍はしているのですっ」
言えば言うほど羽住を混乱させるみたいで、居た堪れない。
実際、日織自身だって現状に納得がいっていないのだ。
何故入籍は済ませていて、書類の上では紛れもなく夫婦のはずなのに、自分と修太郎さんは一緒に住めないのか、と。
「お、お父様がっ。お式が済むまでは一緒に住むことは認めないっておっしゃってらして……」
ギュッとウーロン茶の入ったグラスを握りしめたら、結露に濡れて、手がひんやりと冷たくなってきた。
「えっと……それって藤原の親父さんがお前と旦那の結婚を快く思ってねぇって事?」
「そっ、そう言うわけではないのですっ!」
変に誤解されそうになって、慌ててそれを否定したら、羽住に思いっきり眉根を寄せられてしまった。
「せ、説明するのは難しいのですっ」
モニョモニョと声のトーンを落として「とってもとっても複雑なのです」とつぶやく日織に、羽住が小さく溜め息を落とした。
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