18.大安吉日

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日織(ひおり)、すっごく綺麗よ」 「そっ、そんなっ」 「ああ、母さんが父さんに嫁いで来た日を思い出すよ」  母・織子(おりこ)に褒められて照れまくりの日織(ひおり)に、父・日之進(にちのしん)が軽く惚気(のろけ)を入れてきて、場の空気を和ませる。  前撮りでは文金高島田に綿帽子を被る形で写真撮影をした日織だが、今日は地毛を低い位置でふんわりとまとめたシニヨンスタイル。  右耳の横あたりに胡蝶蘭(こちょうらん)の生花を付けて、華やかさも足してある。  綿帽子の中に綿帽子キーパーを入れれば、文金高島田でなくとも綿帽子の形を崩さずに被れると式場の人から提案された時は感動したのを覚えている日織だ。  お色直しで赤に金糸の織り込まれた花柄の豪華絢爛(ごうかけんらん)な色打ちかけを羽織ることになっているけれど、綿帽子を脱いでもこの髪型なら見栄えもよくて見劣りしない。 「お父様、私、お母様のお若い頃に似ていますか?」  恐る恐る問えば、「驚くくらいそっくりだよ。特に前撮りの写真なんか、母さんかと思って思わず二度見したくらいだよ」と日之進が目尻を下げる。
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