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「理人っ」
修太郎が、これ以上はあまり日織に飲ませたがっていないことを察した葵咲が、すぐ横に座る理人を諌めたけれど後の祭り。
実際理人だって修太郎の気持ちに気づいていないわけはないだろうに、と不思議に思いながら恋人を見つめた葵咲だ。
「僕は……葵咲の将来を縛る足枷になりたくないなと思っています。だから……僕とのことは考えない状態で、葵咲には自分のなりたいものになって欲しいと思っているんです。――彼女がちゃんと地に足を付けられたら、その時こそは葵咲を離すつもりはありません。それが僕が考える〝ちゃんと〟の意味です」
理人がまるで酒の力を借りたから、と言う体で注がれたばかりの日本酒で口を湿らせながら一気に言って。
葵咲はそんな理人を、驚いたように瞳を見開いて見遣った。
「理人……」
葵咲はハッキリと、恋人からこんな風に口に出してその真意を言われたことがなかったのかもしれない。
葵咲の様子を見てそう思った修太郎だ。
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