19.始まりの日*

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「あ、でも……修太郎さんはマイクロバスも運転出来るんでしたよね?」  と瞳を輝かせる日織(ひおり)に、嫌な予感がしてしまう。  弟の健二と佳穂(かほ)夫婦に無事男の子が生まれ、日織が双子を妊娠したことが分かったとき、修太郎は妹たちも入れると修太郎の愛車では定員オーバーになってしまうと気がついた。  忙しい父親に代わって、年に一度は自分が車を出して、弟や妹を旅行に連れて行くのを習慣にしてきた修太郎だ。  独身時代から、無駄に大きなアルファードに乗っていたのだって、そのためだったのだが。  全員乗れないならいっそ開き直って、「旅行の時だけマイクロバスを借りるのもいいですね」と話したのを日織は覚えていたらしい。 「いざとなったら車、もっと大きなのに買い替えちゃうのも手なのですっ!」  嬉々としてそう続けた日織に、修太郎は心の中で『日織さんっ! 貴女は一体お母さんになるおつもりですか⁉︎』と叫ばずにはいられなかった。  でも、あまりに嬉しそうな顔で言われたので、声に出しては言えなかった修太郎だ。  そう。  修太郎はとにかく日織にとことん甘くて頭が上がらない男だから。  でも。  ということは――。  日織が望むのなら、と甘やかした結果、マイクロバスでも乗り切れないくらいの子沢山になってしまう未来もそう遠くない気がしてゾクリと身体を震わせた修太郎である。
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