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「修太郎さん、何を熱心に読んでいらしたのですか?」
日織がソファーに近付いてくる気配に、読んでいた本に栞を挟んでパタリと閉じる。
「学生時代にね、お会い出来ない日織さんのことを思い描きながらよく読んでいた本がたまたま目についたものですから。――懐かしくなって読んでいただけです」
内容までは告げず、少し恥ずかしくすら感じられる本のタイトルを日織の目から隠すように手のひらで覆いながらそう言ったら、日織がパッと瞳を輝かせたのが分かった。
「修太郎さんっ。私、子供の頃みたいに修太郎さんに読み聞かせをして頂きたいのですっ!」
修太郎の大きな手のひらに挟まれて赤い表紙がチラリと見えるだけの文庫本を指差して、日織が屈託のない顔でにっこり笑う。
「学生の頃の修太郎さんがどんな本を読んで私に思いを馳せてくださっていたのか、すっごく気になるのです!」
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