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言われて、修太郎は言葉に詰まった。
この本に興味を持たれてしまったのは、自分の失言が招いた結果だ。
何故〝日織さんのことを思い描きながら〟などと、言わなくてもいい情報を付け加えてしまったのか。
後悔したところで、ワクワクした顔で修太郎を見つめている日織をなだめることは、最早不可能だろう。
この本、確か出だしのあたりは「今からこういう話をしますよ」みたいな前振りから始まったはずだ。
そこを読んで聞かせる分には何の問題もないか。
「最初からお読みするんでよろしいですか?」
そう思った修太郎が一縷の望みを掛けて問えば、ほんのちょっと考える仕草をした日織が、「長編ですか?」と小首を傾げて。
日織に嘘のつけない修太郎は、「ええ。長編です」と答えざるを得なかった。
小説としては20万文字程度で、そう長いものではない。集中すれば1時間もあれば読み終えてしまえるだろう。
だが、音読と黙読とでは違うから。
(諦めてくださるかな?)
一瞬そんな期待をしてしまった修太郎だったのだが――。
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