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場所は日織の生家の彼女の自室。
日織の両親は気を遣って、取るものもとりあえず駆けつけた様子の修太郎へ玄関先で不織布のマスクを手渡して、すぐさま付けるよう促したのだけれど。
修太郎は部屋に入るなり付けていたマスクを外して日織のベッド側に立った。
覆い被さるようにして、そっぽを向いて布団に隠れている日織の顔を覗き込むと、彼女の熱い額を人差し指の背でそっと撫でる。
そうして言ったのだ。
――感染されるために来たのだ、と。
「バ、カなこと、言わな、ぃでくださ……っ」
熱に蕩けたしんどそうな顔を更に真っ赤にして日織が怒るのが可愛くて、ついいじめてしまいたくなる。
だけどさすがに修太郎だって、病気の日織相手にそんなことはすべきではないとも分かっていた。
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