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「熱がずいぶんお高いですね」
つぶやいて、汗でおでこに張り付いた色素の薄い柔らかな髪の毛を丁寧に払いのけてやると、そこにチュッとリップ音をたてて口付けを落とす。
「嫌っ、……しゅ、たろさっ! ダメ、なので、すっ」
いま自分はウィルスまみれな上に、お風呂にもちゃんと入れていなくて汚れているのだと。
どこか泣きそうな顔をしながら睨みつけてくる日織が可愛くて愛しくて。
修太郎は彼女を布団ごとぐるぐる巻にして、マンションへ連れ帰ってしまいたい衝動に駆られた。
もちろん、それは良くないと分かっているから実行には移さないけれど、頭の中では布団にくるんだ日織を家に連れ帰る算段を練っている真っ最中だ。
一緒に暮らせるようになったなら、こんな愚かな妄想なんてしなくて良くなるのに。
そんなことを思いつつ。
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