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「修太郎が」の場合
修太郎のマンションの寝室。
締め切られたままの窓を開けて換気をしてから、日織はベッド上の修太郎を振り返った。
薄茶色のブラウスに、モカ茶にイングランドチェック柄のサロペット風ワンピースを合わせた日織は、とても秋めいて見える。
9月も半ばを過ぎれば、朝晩ぐっと冷え込むようになってきて、日中との寒暖差で体調を崩しやすい。
窓を背にして立った日織が修太郎の方へ顔を向けた瞬間、色素の薄い髪の毛がサラリと肩を流れ落ちて、「とても綺麗だな」と、修太郎は妻に見惚れた。
ベッドサイドに佇む日織を横たわった体勢のまま見上げるには、膝丈より少し上に裾がきている今日の彼女のスカートはほんの少し短か過ぎて。ともすると太ももの半ばまで見えてしまう。
それで、
(眺めが良くて目のやり場に困るんですが……)
などと思ってしまった修太郎である。
修太郎が自分を見詰めながらそんな不届なことを考えているなんて露ほども思っていない日織は、ぷぅっと頬を膨らませて修太郎を叱った。
「ほらっ。修太郎さんが先日お見舞いに来てくださった折、馬鹿なことをなさるからこんなことになるんですよっ? 自業自得なのですっ!」
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