「修太郎が」の場合

3/7

445人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
「許、可……?」  受け取った体温計を小脇に挟みながら、熱い吐息とともに日織を見上げれば、 「はい! 修太郎(しゅうたろう)さんの看病をするための無期限の外泊許可なのですっ!」  そう返されて、修太郎は瞳を見開いた。 「あの、日織(ひおり)さん、それ……は」  本当ですか!?と、日織を抱きしめて大喜びしたいところなのに、喉が痛くて上手く喋れない。その上、身体が怠くて思うように動けないとか。  それらが、修太郎にはもどかしくて堪らなかった。 「私のうつした風邪なので、きっと私には戻ってきませんっ。よくは存じ上げませんが、免疫ってそういうものなのでしょう?」  眉根を寄せて問いかけられて、修太郎は思わず日織をじっと見つめてしまう。  確かに自分もそう言う風に認識しているけれど。  時折、修太郎が驚くほどやけに博識になったり、「今更そこに気づきますか?」と驚かされるような常識的なことを嬉しそうに「すごいことに気付いたのですっ!」と微笑んだり。  日織は本当に掴みどころがない。
/318ページ

最初のコメントを投稿しよう!

445人が本棚に入れています
本棚に追加