「修太郎が」の場合

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修太郎(しゅうたろう)さんのお熱が下がるまでの間、私がずっとお傍にいて、修太郎さんの身の回りのお世話をさせて頂いちゃうのですっ」  再度キリリ!と背筋を正して敬礼をして見せてくれた日織(ひおり)に、修太郎は思わずしんどいのを忘れて前のめりになった。 「――そ、れはっ……ぼ、くとしても……願っ、たり叶ったり、です。ご迷惑、をおかけ、し……ますが、宜しく、お願、いし、ます」  ――日織がしばらく(ここ)に滞在してくれる。  そう考えただけで、熱があると言うのに修太郎の心はソワソワと浮き足立って、自然口の端に笑みが浮かんでしまう。  その笑みを隠さないままに(かす)れた声で何とかそう言ったら、 「頼りなく見えても私は修太郎さんの奥さんなのですっ! ドォーン来いなのです!」  よくは分からないが、日織に胸を張られてしまった。  それを見て、修太郎は少しだけ。  そう、ほんの少しだけ日織をいじめてみたくなる。  日織自身が辛い時は控えたけれど、自分がしんどい分には問題ない。  修太郎はそういう男だったから。
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