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小さな日織の身体をすっぽりと包み込んで覆い隠してしまうほどの長身の男を見上げて、羽住は我知らず息を飲む。
床がフカフカなウィルトン織りのカーペットだったせいか、すぐそばに彼が近付くまで気配を感じなかった。
それで、急に横から日織に手が伸びてきたように錯覚して、やけにドキッとしたのはここだけの話だ。
自分たちの他にもたくさんの往来があったから、それに紛れたというのはあるだろう。
しかし、だ。
忍びか剣客じゃあるまいに、男に日織が抱き寄せられる寸前、羽住はほんの一瞬背中に物凄い殺気を感じた気がしたのだが、気のせいだよな?と自分に言い聞かせる。
黒のテイラードジャケットに、同色のチノパン。中にグレイのVネックシャツを合わせたシックな装いの、黒縁眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気のその男は、自分たちより歳が大分上に見えた。
だが、それが親父っぽいとか年寄りくさいとかそういう風に見えないばかりか、大人の男という色香をまとっていて、不覚にもかっこいいと思ってしまった羽住だ。
背丈にしても、羽住自身それほど低身長ではないにも関わらず、この男よりは優に数センチは劣っていて。
さっきまでは、女性の中でも小さめな部類に入る日織と並べば、自分だってお釣りが来るほどに身長差があると思えていたのに、眼前の男には到底敵わないと痛感させられた。
それに――。
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