445人が本棚に入れています
本棚に追加
/318ページ
***
「君がさっき、うちの妻の携帯を取り上げて彼女を困らせてくれた羽住十升くんですか?」
羽住は、自分をひたと見据えられて発せられた塚田修太郎の言葉に、無意識になけなしの唾液を飲み込んだ。
喉がカラカラに乾いて、呼吸が止まってしまうのではないかと言う、何とも言えない威圧感を覚えさせられる。
わざとらしくフルネームで言質を取るみたいに問いかけられたのが、余計に怖い。
別に恫喝されたとか胸ぐらを掴まれたとかそう言うわけではないのに、日織を見つめていた時とは明らかに眼前の男が身に纏った空気感が変わったことを、羽住はヒシヒシと実感せずにはいられなくて。
気が付けば、程よく空調のきいたホテル内にいるにも関わらず、全身に鳥肌が立っていた。
何か応えなければと思うのに、声が出せない。
まるで、蛇に睨まれた蛙の気持ちだ。
最初のコメントを投稿しよう!