4.君が羽住十升くんですか?

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 すぐそばの修太郎(しゅうたろう)を、全幅の信頼を寄せたキラキラとした目で一瞬だけ見上げた後、日織(ひおり)羽住(はすみ)の先程の行いを責めるようにキッと睨みつけてきた。  今まで見たことのない日織の強い視線を今日だけで2度も受けながら、羽住(はすみ)は小さく吐息を落とす。 (なぁ、日織よ。お前には悪いんだけどさ。俺、お前が2次会に行きたいって言ったとして……、その男にうまいこと丸め込まれて結局行けねぇ未来しか見えねーんだけど)  さすがにそれを言う勇気は、今の羽住(はすみ)にはない。 「本当、すまなかったな? ――全部俺の勘違いだったみたいだわ」  吐息混じりにそう言って頭を下げる羽住(はすみ)に、今まで黙って日織と羽住(はすみ)のやり取りを傍観していた修太郎が口を開いた。 「何を勘違いなさっていらしたのかは存じ上げませんが、うちの妻を困らせることだけはないようにして頂きたい。――よろしいですね?」  声音こそ本当に穏やかだけれど、その言葉には有無を言わせぬものがあって。 (そもそも「金輪際」も「2度と」も全否定に繋がる言葉だろ! それをわざと重複させて強調してくるとか……マジ()えーわ!)  羽住(はすみ)は見えないナイフの切っ先で、首筋をツツツ……と撫でられたような錯覚を覚えた。  ――もし再び同じことが起こるようなら容赦はしない。  そう言外に含められているのは明白だったから。 「わ、かりました」  自分でも情けないぐらい声が震えてしまったのを感じて、羽住(はすみ)はグッとこぶしを握って自分を懸命に保とうと努力した。
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