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「あ、あのっ、私……」
日織は、修太郎に対してやましいことなんて何ひとつないはずなのだ。
確かに、同窓会の間中ずっと羽住と一緒にいたことは確かだけれど、どこかの個室でふたりきりでいたとか、そういうわけでもなかった。
ただ、広い会場の中、たまたま?隣に座って料理を食べながらお話をしただけ……。
そう。
日織は修太郎からの言いつけを守って、お酒の一滴だって飲んでやしないのだ。
「私っ、修太郎さんのお言葉を守って、お酒を飲んだりはしていないのですっ」
日本酒だって、頼めばあったかもしれないけれど、あえて自分から求めようとはしなかった。
「私、烏龍茶しか……」
言えば、「そんなことで僕が怒っていると?」と静かに問いかけられた。
投げかけられた修太郎の視線の冷たさに、日織はギュッと身体を縮こめる。
日本酒以外のお酒を飲むことは禁じられていたけれど、飲んでいるかいないかは日織の様子を見れば一目瞭然だ。
それに、お酒云々は羽住とは直接絡んでいないではないか。
羽住が酒蔵の息子ということで、我知らずつい関連性を持たせて考えてしまっていた日織だったけれど、よく考えてみれば修太郎はそのことを知らないはずで。
「お酒=羽住」の構図自体成り立つはずがなかった。
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