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「……はぁ、んっ、しゅ、うたろ、さっ……」
自分が何故突然こんな目に遭うのか分からないといった戸惑いの表情で瞳を潤ませて修太郎を見上げる日織の無意識の秋波。
怯えたようにも見えるそれがとても扇情的で、修太郎は己の中の加虐心がふつふつと煽られるのを奥歯を噛み締めてどうにか抑える。
先程の日織と同級生の男――羽住とか言ったか――のやり取りを見て、嫉妬で狂いそうなのは事実だけれど、まずは日織の話を聞いてからだ。
結婚前には、この激情で幾度となく日織に無体なことをしてきたという自覚がある。
だから、せめて夫婦となった今ぐらいは……ちゃんと妻からの言い分(言い訳?)を聞いて、その上で行動に移せる夫になりたいと、修太郎は切に乞い願っている。
願ってはいるのだけれど――。
よそ行き用に綺麗に整えた髪の毛を力づくで乱され、夫からいきなりぶつけられた情火に涙を浮かべた状態ですら、修太郎の妻は腹立たしいくらいに美しく蠱惑的なのだ。
客気に駆られるな、と言うほうが無理なのではないかと修太郎はへこたれそうになる。
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