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「私……修太郎さんに何か悪いことを、してしまいしたか?」
小さくつぶやくようにそう言った日織が、ふるふると身体を小刻みに震わせているのは理不尽なキスへの怒りのためか、それとも痴情を堪えきれない修太郎への恐れのためか。
「僕が何を気にして、何に嫉妬しているかもお分かりにならない?」
腕の中の日織をじっと見下ろしながらそう言ったら、日織が一瞬大きく瞳を見開いた。
そうして修太郎の頬へそっと手を伸ばして触れてくる。
「修太郎さんがお妬きになられるようなことは、何ひとつしていないのです……」
日織の指先がひんやりと冷たいのは、彼女にいきなり激しいキスをして、驚かせてしまった自分のせいだろうか。
修太郎はそんなことを思って、頬に触れる日織の手をそっと包み込んだ。
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