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しかし、そんな余韻に浸る間もなく、頬っぺたを挟まれたまま、日織にギュゥ〜ッと顔を思い切り引き寄せられて、カプッと可愛く噛み付くように口付けられたから堪らない。
何が起こったのか頭が追いつくまでに数秒を要して……。理解が追いついたと同時に驚いて、修太郎は瞳を見開いた。
「――日、織……さっ!?」
慌てて日織から唇を離して小悪魔な妻を見下ろした修太郎は、自分の全身が照れて熱くなっているのを感じる。
日織からこんなことをされたら、チャンスとばかりに舌を絡めて攻め立てていてもいいはずなのに、そんなことをするゆとりさえなかった。
さっきまでは確かに修太郎が主導権を握って、眼前の小さな身体を支配していたはずなのに。
今は完全に形勢逆転された!と認めざるを得なかった。
「――私が他の男性に目移りしそうで不安? そんな愚かなお考えに取り憑かれてるのは一体どこのどなたですかっ!」
頬と唇は解放されたけれど、今度は胸ぐらをギュムッ!と掴まれて、どこかの組の姐さんも斯くやと言わんばかりの威勢の良い啖呵を切られてしまう。
キッ!と睨むように強い視線で見上げてくる日織に、「お返事が聞こえませんよ!?」と催促されて、修太郎はタジタジだ。
結果、修太郎はそんな日織の迫力に気圧されて、「……すみません、僕です」と謝罪混じりに認めてしまっていた。
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