プロローグ

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「どうやら…着いたようね」 ケルベロスの一つの首が、意識を取り戻したようで起き上がる。 「いたい…」 「ほんとですワンッ!もっと優しく扱ってほしいワンッ!」 「ええ…けど、ここを征服すれば言い訳ね」 「ぇ…ちょっと待って……」 「待たないワンッ!蹂躙するワンッ!支配するワンッ!征服するワンッ!」 「…え?あれ……?」 「なんだワン…?ワ、ワンッ……!?」 一つの首に、反応するかのように他の首も目覚めたのだが…何か、様子がおかしい……。 どういう訳か、三つ首の魔獣は巨大な体ではなかったのだ。 いや…そもそも、大きさもそうだが…それよりも、もっと大きな問題が発生していた……。 彼女らはその異変に言葉を失う…。 何故なら、何処からどう見ても彼女たちは巨大な三つ首の獣ですらなく、体が、一つ一つの個体としてそこに存在していたのだ…………! 「な…か、体が……」 「別れてる…」 「ど、どういう事だワンッ!?」 「わ、分かる訳ないでしょ…?」 「待って…」 「どうしたの?」 「魔力が…力が出ない……」 「…え?」 「ほ、ほんとだワンッ!どうしてだワンッ!?」 三つ首の魔獣、いや…元、三つ首の魔獣はどういう訳か、只の犬の姿になっていたのだ…。 体は完全に別れ、個々の生命体としてそこに存在していた……。 「由々しき事態だわ」 「…同感」 「やばいワンッ!力がないってどういう事だワンッ!?」 「そもそも、あなた達の姿…」 「なに…」 「なんだワンッ?」 「ぶふぅっ!何て、弱々しいのっ!」 「弱々しい…?」 「失礼だワンっ!ケルの方が弱々しいんだワンっ!」 「そ、そんな訳ないでしょう?」 「いや…弱そう…」 「ベ、ベロ…あなたに言われたくないわよっ!」 「二人とも弱そうだワンッ!今から私がリーダーだワンッ!」 「「却下」」 「ワ、ワンッ!?」 ぎゃあぎゃあと騒いでいるそんな三人に、忍び寄る影……。 「だ、誰……!?」 ケルと呼ばれた女の子であろう獣は、その気配に気付き、振り向く……!
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