第1話  ポテチは私の好物

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 本気で飛ぼう等とはしていない。 彼女が飛ぶときはもっと羽根を大きくする。 こんな小さな状態の羽では彼女の体を持ち上げることすらできないから。  これは彼女なりの冗談を混ぜた、お茶目な挑発だ。 「くっ、もういい。 明日も早いからもう寝るぞ! 」 「おい、待て。 そのポテチはまだ食べ終わってないぞ! 返してくれ」 「もうポテチはいい、また今度食べろ。  もう電気消すから、早く歯磨けよ」 「待ってくれ、そんなことしたらポテチが湿気てしまう。  お前、開けたものは最後まで責任を持って食べろと言うただろう。  それに毎日のように言っていたではないか。 お残しはいけませんと。  開けたのはわたしだ。 最後まで責任をもつ。 だからそれを渡してくれ」 「アホか。 それとこれとは別だ」  ユウカは中のポテチが湿気ないように袋の裂けた口を、残ったポテチの方向へ小さく折り、くるむように巻いていく。  しかし、折っても折っても中のポテチに当たらない。  袋の中身はほとんど空だ。
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