プロローグ

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白くて少し透明な丸いモノがいくつも目の前を走り回っている。  こいつらは語り掛けてくることは一切なかった。  それに、こっちに攻撃してくることも、近づくことも無い。  忙しそうに周りを飛び回って居るだけ。  しっかり確認しようと思って焦点を合わせようとしたら、そいつらは見えなくなった。  それから、そいつらは俺の部屋でも見れるようになった。  ついて来たのか??  ただ、いつも見れるわけではなかった。  そいつらを見る為には見方がある。  その方法は、心を無にする事。と言うと語弊があるが、見ようとして見るのではなく、ただ、ぼーっと何気なく窓の外を、見る。  別にどこに視点を当てるでもなく、ただ何気なく明るい窓全体を見るんだ。  そうすると、この部屋には沢山の白い妖精と言うモノが 飛び回っているのがちゃんと見える。  姉の話では、部屋によっては、それは見えないらしい。  例えば暗く、陰気な部屋など、そういった部屋ではこいつらがいる事は無いらしい。  彼らは、明るく、陽の気がある部屋に集まって来る。  だからこの妖精が見える場所にいる人は、とても強い陽の気を持っているのだと姉は言う。  しかしそれは妖精などと言うものではない。  それがそういうもだと言う事を、きっと姉ちゃんは知らない。  別に姉が嫌いなわけではない。  優しくて人当たりがいい。だから俺は、姉ちゃんが大好きだ。  だけど、そういった幻想を平気で信じて語ってしまう人になってしまった事にただただ、悲しくなった。  この手の話がでると、流すことにしている。  厳密に言うと、この白い球の正体は自分の白血球だ。  明るく入ってくる光の方に目を向けると反射して、自分の瞳の中で働いている白血球を見ることができる。  これは誰でも見ることができるモノ。 しかし注意してボーっとみていないと気付かないことが多い為、日常でも太陽の下で起こってはいるが、気づいている人が少ない。  今までもこれからも俺は霊的な何かなんてものは大人が作ったまがい物。信じるつもりはない。  と言うより信じていない。 そもそもおかしい話だ。何かが見えるだの、何かがそこにいるだの。俺からすれば、有名になりたい、自分はすごい人だと注目を浴びたという風にしか聞こえない。  別に見えないモノを信じないと言っている訳ではない。  確かに運命や、巡り合い、決まっていた定めなどは信じている。  目に見えないし、形に無い。それを立証できる説明もできない。何故そんなことが起こったの?と聞かれれば。 ”それが運命だからだ”としか答えようのない事柄。誰も事細かに経緯を説明できる者などいない事象。  だからこそ人は形の無いモノをそのままにしておくのを怖がる。何かに付けて何かのせいにしたい生き物だから。  じゃあ、ここで俺の横にいて、楽しそうにポテチを食っているこいつはいったい……なんだ?    黒い羽に小さな鋭い牙が生えている。頭にも小さな角のようなものが二本可愛く頭を出している。  それに極めつけはうねうね動いてる尻尾。  黒くて先っぽが尖がっている。  硬いのか?柔らかいのか?触るな!などと言うので、わからないが。  よく動く尻尾。    そして綺麗な透き通る金髪の女の子。  目を開けた時に見える綺麗な薄水色の瞳。  見た目は普通の小さな女の子なのに余計なものが色々と付いているのだから、普通の、”人”では無いのだろう。 こいつと一緒に居てしまったが為に、 俺の人生は波乱な方向へと進ませる張本人なる事ををこの時の俺はわかっていなかった。
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