15人が本棚に入れています
本棚に追加
いつからだろう。彼への想いが、尊敬から恋へと変わっていたことに気がついたのは。
――捜査一課刑事・相川律花は、警視庁の庁舎へと足早に向かいながら考える。
決定的にこの想いの変化が明確になったあの事件まで、果たしてそれは尊敬のままだったと断言できるだろうか。
庁舎の入口―自動ドアを潜り、早くも働き始めている職員の挨拶に答えながら、エレベーターホールへとたどり着いたときだった。彼―高藤颯真がこちらへと歩いてきたのは。
「おはようございます」
特別な緊張感からか、少し上擦った声音が出てしまったが、直属の上司から視線を逸らせるはずもなく、律花は仕方なしの微笑を口元に湛えた。
「おはよう―相川」
右手首の腕時計から顔を上げ、一度瞬きし挨拶。そして一拍置いて名前を呼ぶ―いつもと変わらぬ所作に、何故か今日はドキリとしてしまう。
―今日、この想いを伝えようとしているからだろうか。
最初のコメントを投稿しよう!