今日、告白します。

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「でもいつから?…やっぱり、で……」 「うん、そう……。主任に助けてもらったとき…」 「そっか~」  「確かにあの時の主任、格好よかったもんね~」と思わずといったように相貌を崩した彼女に、律花もつい素直に頷いてしまう。  ―それは今から一年前、律花がかつて逮捕した犯人から逆恨みを受け、人質として拘束されてしまった事件のことだ。  職業柄恨まれることは当然―。そう後輩を指導していたにも関わらず、いざ捕まってしまうと恐ろしくて、悲鳴すら出なかった自分をひどく恥じた。  しかし彼が律花の元へ駆けつけるのにかかった時間は、僅か一時間足らずだった。  ゆっくりと、だが重みのある言葉で犯人を諭し、怯んだ隙を見逃さず、素早い動きで拳銃を奪い取り拘束した。 「……主任…私…」  手首のロープをほどかれる間、律花は自分の不甲斐なさに彼の顔を見れなかった。 「相川―」  もう何を言われても構わない―そう叱咤の言葉を覚悟し、固く瞳を閉じた。  しかし何故か、いつまで経ってもそれは聞こえてこず、代わりに左頬にそっとぎこちなく何かが触れた。 「……?」  恐る恐る瞳をこじ開けてみると、こちらを不安げに見つめる彼の姿があった。―触れたのは、彼の右手だったのだ。 「無事でよかった……」  その慈しむような眼差しに、思わず熱い涙が頬を伝った。
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