29人が本棚に入れています
本棚に追加
3歳を過ぎた頃から、毎年誕生日はワクワクとガッカリで、感情がすごく忙しかった。
9歳にもなると、落胆の方がおおきくなり、来年こそは!と思いすぎて、逆に誕生日が憂鬱になるくらいだった。
そして、12歳は最後のチャンスくらいに思うほど切実だった。
それなのに!ああ!それなのに……。
朝起きて、人間のままだったぼく。絶望すら感じたよ。いくらポジティブなぼくだってさ。
いったい、いつなんだ?
ぼくが獣人に成れるのは、いつなんだ?
同級生たちは、みんなとっくに獣人に成っている。
あの朝、母は人間のままのぼくを見て、きっとがっかりしたはずだ。同じように絶望を感じたかもしれない。
それなのに母は、気にも留めていない様子の、いつもどおりの笑顔でこう言った。
『おはよう、ヒョウちゃん。お誕生日おめでとう!』
だけど…………、
誕生日の次の日から、母の豹変は始まった…………。
「ジュルジュル~~~」
ぼくが考え事をしていて、食べる手が止まっていたので、ブルーが痺れをきらして器から直接すすっている。ブルーはせっかちなところがある。
「ヒョウちゃん、夏休みの自由研究は何にするか決まった?」
母は自分の不機嫌さを断ち切るように、明るい声で聞いてきた。
「まだだよ。今日考える」
「花火大会の絵とかはどう?来週、南部であるじゃない。今年は四年に一度の盛大なお祭りの年だから、一緒に見に行きましょうね」
「そっか。四年祭りの年だ」
ぼくが生まれた年がまさにちょうど四年祭りの年だった。
それから三度目の四年祭り。
最初のコメントを投稿しよう!