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学校の夏休みは、1ヶ月ある。
宿題は自由研究のみ。ぼくは何を研究するか、すでに決めている。
ずばり『ぼくについて』だ。
なぜ、ぼくは獣人に成れていないのか?
悲観していても前には進めない。わからないことは調べればいいのだ。
獣人は、その親と同じ個体が生まれるとは限らない。何億通りもの遺伝子の掛け合わせが考えられ、成長過程も個体差がある。
ぼくは、スフィンクスの母と半漁人の父から生まれた猫人。(になるはずの今は人間)
親の遺伝子の影響ってどのくらいなんだろう?
まずは図書館で、過去にぼくのような例がないかを調べてみよう。
ぼくは朝食の後、早速図書館へ向かった。
「遺伝子について……」
検索をかけて棚を探す。
遺伝、環境、特異体質と合わせて、過去に同じような事例があれば、ぼくの成長が遅い理由もわかる。それがわかれば母のストレスもましになるのではないか?
それに、何よりぼくが知りたい。自分のことを。
父が居なくても、母が豹変しても、ぼくは負けない。
でも、獣人には成りたい!
生徒会のやつらにだって負けたくはない。理不尽な言いがかりや仕打ちに辟易している。
ぼくがあいつらに呼び出されたり、体育で集中的にやられたり、その他諸々嫌がらせを受けているのを知っていても、先生は見て見ぬふりを決め込んでいる。
なぜなら、教師はみな虎人の一族だからだ。
学校長がアルファの父親だと言うのもあって、アルファたちの行動がとがめられることは一切ない。
だいたい虎人一族のどこがそんなに秀でているというのだろう。
そう決まっているから?
昔からの常識だから?
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