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ぼくは、貸し出しカウンターにいる山羊人のお姉さんに聞いてみることにした。
「すみません」
ぼくが声をかけるとお姉さんは顔を赤らめた。美少年だからよくあることだ。
「この章が破れていて無いんですが」
「あ?あ……。それですか。そちらは前の担当者のクロエさんが、書物整理のときにお腹がすいて食べてしまったのです」
「え?」
そんなことあるだろうか?
詳しく聞こうとした途端、閉館を知らせる音楽が流れ出した。
「申し訳ありません。閉館の時間です」
そういって片付けに集中していますので話しかけないでアピールをされた。
このタイミングで?すごく怪しい。
時計を見るとカチッ。たった今、閉館の5時になった。2分は早かったと思う。
仕方なく、明日また別の文献も調べることにして帰ることにした。
夕焼けの中、家に続く石畳の一本道を歩きながら、今日調べたことを思い返す。
猫科における劣性の特異体質は見つからなかった。過去に合体の遅かった例もなかった。
親の遺伝子が悪いほうに作用する例もなかった。
ぼくだけが特異体質なのだろうか……。
同族結婚で無い限りは、みんな一代限りの個体であり遺伝子が同じ個体は存在しない。
だから、それぞれが特異体質だと言っても過言ではなく、もっと例外のデータがあっていいはずなのにおかしい……。
「くわっ」
図書館に居る間中、ずっと昼寝をしていたブルーが起きた。
ぎゅるるるる~。
お腹が鳴った。ブルーの。
そういえば朝ごはんを食べたっきりだった。
思い出すとぼくも、ものすごくお腹が減ってきた。
「走るね」
ぼくは足が速い。人間にしては、だが。
ぼくは、出来るだけ急いで走って帰った。
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