29人が本棚に入れています
本棚に追加
『西部の果ての島まで行ってきたよ。伝説の西新宿島。やっかいな連中もいてさ~。大変だったよ~。処理に半年もかかっちゃった~。でね。でね。
ごめん!ごめんなさい!今年の四年祭りには帰って、みんなで花火大会に行こうって約束してたのに、帰れそうにない。西新宿島の処理は3ヶ月の予定だったから、半年もかかった始末書とその間の業務のしわ寄せで、長期で帰れるのは、秋ごろになりそうです。トリデさん、本当にごめんね。政府との……』
バタンッ!
玄関の扉の音がした。
夢中で読んでいたぼくは、大きな音に心臓が飛び跳ねるほど驚いた。
ドスドス歩いてくる足音。
母さんの意識があるときは、バサバサっと軽やかに飛んでくるはずだ。
ドスドスドスドス!
受け入れ難い現実の音。
「ひょう~!ひょう~!」
地鳴りのような声に呼ばれている。
手紙を早く引き出しに戻さないといけない。
ぼくは焦る。手紙を畳む手が震える。
「ひょ~うちゃ~ん!ひょ~うちゃ~ん!」
「えっ?は、はい!」
いつもと違うパターンで呼ばれ、うっかり返事をしてしまった!
手紙に気を取られていたのもあって、かなり気持ちが動転していた。そこに突然の母の帰宅。いつもなら寝たふりをしていれば、返事をしないで無事に済むのに……。
そこからは、まるでスローモーション。
後ろを振り向いて見えたのは、ニタッと笑ったおっぱい。
時刻は8時半。
やはり、母はすでに豹変していた。
背筋がぞくっとしたのも束の間。
母のお腹の毛の中からブラックホールが現れた!
ブラックホールの口が開き、ゴーっと言う音とともに風が起こり、手にしていた手紙は舞い上がった!
瞬間、ぼくはもの凄い吸引力で吸い込まれた!ブルーと一緒に……。
最初のコメントを投稿しよう!