1. 惑星ビーストピア

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「ヒョウー、ヒョーウ、ヒョウ!」 ぼくを呼ぶ母の声。 夢うつつに聞きながら、今日から夏休みなのだからゆっくり寝かせてほしいと思う。 それでなくても、このところずっと寝不足なのだ。昨日は特に疲れたし……。 バサッという大きな風の音がしたと思ったら目の前に母がいた。 「ヒョウちゃん!いつまで寝ているの!顔を洗ってらっしゃい!」 ぼくはそっと目を開ける。 よかった、いつもの母の姿だ。 母は上半身は金髪美女、下半身がライオンの所謂スフィンクス。大きな翼を持っている。 ここ、東部地区の役所で受付の仕事をしている。 一見、普通の美しいスフィンクスだが、夜8時を過ぎると豹変する。化け物に。 どんなって? これが息子のぼくから見ても、とても恐ろしい化け物だ。 夜8時になると金髪美女である母は眠り、お腹の辺りに、もう一つの顔が現れる。 おっぱいが目玉になり、お腹のあたりに大きな口ができる。この口はブラックホールで、吸い込まれるとどこかへ飛ばされる。たぶんね。どこに飛ばされるかは分からない。スフィンクスには、そういう能力があるのだ。 目玉は青い血管の筋が浮き出て終始ギョロギョロしていて、お腹の口から地鳴りのような声で名前を呼ばれる。 『ひょーう!ひょーう!』 てね。 返事は絶対にしちゃダメだ。聞こえないフリ、寝たフリでやり過ごす。 返事をすれば、途端にブラックホールに吸い込まれる仕組みだ。
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