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南部には様々な遺伝子に対応した、色んな薬玉の研究所があると本で読んだ。ぼくの合体につながる薬玉があるかもしれない。
こっちのほうが重要かもしれない。父に会えたら一石二鳥だけど。
「なんで薬玉のことなんて知りたいんだ?」
「そりゃあ、獣人になりたいからだよ。成長急促進の薬玉があるって本に書いてあった」
「薬玉で無理に合体しても、獣人の力を使いこなせねーぞ?」
なに、その知ったかぶり。
「Gにはわかんないよ。獣人にまだ成れていない人間の気持ちなんて」
「誰かがなんか言うのか?」
Gがまじめな顔して見つめる。
「誰も彼もいっぱい言うよ!」
ぼくはぶっきらぼうに答える。いいかげん飽き飽きだ。こんな自分。まわりの扱いも。キャッツ・クロウのやつらも!
母さんだって、ずっと息子が人間なんてきっと嫌だからストレスで化け物に!
本当はわかっている。みんな憐れんでいるんだ。この年でまだ合体してないんだって。
人間だなんて可哀想って。でも!
「うじうじなんかしたくない。ぼくが獣人になれればいいだけのことだ」
ぼくはシンプルな考えが好きだ。獣人になる。そのためなら薬玉も使う。それだけのことだ。心の中に得体の知れない何かが宿った。
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