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それより気になるのは、さっきの薬玉。
「はやく獣人に成れる薬玉がその、RUN・B(ラン・ビー)ってことですか?」
ニヤッと笑う皇子さま。だから、綺麗だけど怖いって。
「良い話をしてやろう。わたしの話だ」
ゼロは、すぐそばの切り株の上にぼくを座らせて、その横に自分も座り話し始めた。
「わたしの姿を見てどう思う?」
「えっと……」
「そうだ。わたしは美青年だ。しなやかで美しい漆黒の毛皮を持つ特別なドーベルマンだ」
ぼくは何も言ってないが……、話の腰を折ってはいけないと思い頷いた。
「このように非の打ち所がなく美しい、英知に満ちたわたしでも、生まれた時は何もできない人間の赤ん坊だった。肩に小さな黒い犬が乗っていた。言葉は話せたから高知能の特別な赤ん坊ではあるが、自力では歩けなかった。しかし神は、そんなわたしを助けるべく下僕となる兄弟を三体使わしていた。
特にイチは、わたしをサポートするために、はじめから獣人の完全体で生まれてきたのだ。わたしは神の意図を理解し、イチに己のやるべき仕事を教えてやった……。
早くわたしを抱っこしろ!とな」
「……、…………。」
震えている。頭のブルーが笑いをこらえて震えているのがわかる。
ゼロは、いたってシリアスに語っている。
ぼくは、笑っていいのかなんなのか、全く先の読めない話に困惑している。
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