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「このわたしが、イチにサポートされないと歩けなかったとは理解しがたいだろう?」
「はい……。色々と理解しがたくて……」
違う意味で言っているのに、ゼロは『そうだろそうだろ』と頷いている。
話が通じそうにないが、気になった事を質問してみる。
「獣人の姿で生まれてくるって、イチさんはやっぱり別格なんですか?イチさんは」
「だまれ!イチの話はどうでもいい。今はわたしの話をしている」
はい、自己中。チーン。
やはり話は通じない。
……ブルー、笑いすぎだよ。
「さて、人間のわたしを抱っこした獣人と、その後ろに犬が二匹赤ん坊を乗っけてちょろちょろしているのを見た聡明な父上は、すぐに神の意思を悟ってわたしたちに命名した。わたしを唯一無二の絶対的基準ゼロとし、わたしのサポーターとして、下僕のイチ、ニイ、サンと命名したのだ」
すごい主観的な話だ。
でも、何故イチ、ニイ、サン、ヨン、とかでなく、ゼロからだったのかって疑問に思っていた。ぼくは段々とゼロの話に聞き入っていた。
「しかしだ。選ばれし者には試練がつき物である。わたしの知力は格段に高いが、体力はあまりなかった。そして3歳の誕生日の朝、ニイとサンが獣人に成った。イチはすでに成人に成長していた。わたしだけが肩に小さな犬を乗せた、小さな人間の子供のままだった」
わかる。周りに取り残されるいたたまれなさ。それが兄弟で自分だけなんて。
「わかります。ゼロさんの気持ち」
ニタッ。
歪んだゼロの笑顔にぞくっとした。
「そうか、やはりわかるか。そこでわたしはかねてから噂を聞いていた薬玉を調べた。その間に自力でも合体できるように体を鍛えた。そしてある情報筋から王室の研究所にその薬玉が保管されていることがわかり、盗み出し飲んだ。5歳の誕生日の日だ」
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