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なんだか、一気にきな臭い話になって来た。
ぼくの心臓は、かなり主張している。ドキドキドキドキ……。
「そ、それが、成長急促進の薬玉?」
「そう、RUN・B(ラン・ビー)だ。わたしが長男なんだ。イチより、誰よりも先に大きくなっていなければおかしいだろう」
「それを飲んで、どうなったんですか?」
「見てのとおりだ。この、今の姿に一気になれた!」
「えっ?いきなり成人に?」
「そうだ。王室の伝説として語られている。一夜にしてイモ虫が蝶になったと!」
成人となり、その個体が確立されれば、年齢など関係なくなる。大人の個体は対等な立場だ。遅く成人になろうが、その日から対等とみなされる。
「ランニングベイビー……」
「そうだ。興味あるだろう?」
「副作用はなかったの?」
一番気になるところだ。ニュータイプとか凶暴性とか。
「ない。わたしを見ればわかるだろう?」
ぼくは、まじまじとゼロを見た。
線の細い美青年。しなやかな犬の下半身。少し細すぎるが特に問題はない……かな?
いや、性格に問題がありそうだ。
「言っておくが、性格は生まれつきだ。君にとやかく言われる筋合いはない。この単細胞が。顔に全部出ている」
ひいい。性格大問題!
「もちろんわたしは、それなりの覚悟を持ってRUN・B(ラン・ビー)を飲んだ。選ばれし者であるなら、必ず成功例となるだろうという自信もあった。自分の未来をかけて自分を試したのだ!」
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