第二章 深まる謎

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歩き始めて、もうすぐ1時間が経とうとしていた頃、ザンドラが声を上げる。 「あれ! あれがあたしの住んでた村さ!」 ザンドラが指を差した先を見ると、そこにはウォーマルが襲った後がちらちらと見えていた。 「っ……」 「どうした? セシル」 セシルがその村を見るやいなや、足を止めた。 「師匠……?」 レオが顔を覗けば、セシルの目からは涙が溢れていた。 「俺が、住んでいた村だ……」 「なんだと? あんた、ここに住んでたのか?! そんなの、知らないぞ?!」 ザンドラが驚いて目を大きくさせる。 「ああ……ザンドラはまだいなかった時に、引っ越したからな。知らなかったのも無理もない」 セシルは涙を拭いながらそう答えた。 「ここが、師匠の故郷……」 「ふ……あまり、いい思い出はないがな」 セシルはそう言って微笑み、レオの頭を撫でた。 3人は村へと着き、ザンドラは早速家に向かおうとしたが、セシルは少し、村を見て回りたいと言った。 「師匠、俺も着いてく!」 「ん? ああ、いいぞ」 「じゃああたしは夕飯の材料探してくるな!」 そこでザンドラと離れて、セシルとレオはゆっくりと歩き出す。 「なぁ、師匠。質問していいか?」 「ああ、いいぞ」 「師匠はなんで、ここを離れることになったんだ?」 セシルは一拍置いて、まるで決意したかのように、息を吐き、言葉を紡いだ。 「俺たちの親が、やらかしちまったのさ。村の住民に対して、攻撃してしまった。親はその償いをして、処刑された。俺らは、村から追放されたんだ」 セシルは度々言葉に詰まりながらも、そう話した。 「"俺ら"ってことは、師匠だけじゃなかったのか?」 「ああ。俺の、姉もだ」 そこでレオはセシルの顔を見た。 ウォーマルのことを話す時も、今と同じような顔をしている。 まさか、とは思ったが、セシルが小さく「あ……」と声を漏らしたのを聞いて、思考を途切れさせた。 「どうしたんだ? 師匠」 「……俺の家だ」 セシルが見ている方向を見れば、そこには大破した家屋があった。 「あまりいい思い出もないし、思い入れもないけど、、腐っても故郷なんだな……涙が溢れてきてしまう」 セシルはそう言って笑った後、止めどなく溢れる涙を手で必死に拭った。 レオはセシルの思いを察してか、何も言わずにセシルの手をぎゅっと握った。 そんな時、少し遠くから声をかけられた。 ザンドラかとそこに目をやるが、その人物はレオにとっては見知らぬ人だった。 だが、セシルは知っているようだった。 「お主、セシルか……?」 「まさか、ロタール叔父さん……?」 ロタールと呼ばれた、青い目のその老人はセシルを見て、「おおセシルや、村に戻ってきてしまったのか」と悲しんだ。 その次に、ロタールはレオを見て、セシルに問うた。 「この子は?」 「俺の事を慕ってくれる、優秀な弟子だ」 「俺はレオ・マクト。よろしくな、ロタールおじさん」 レオがそう自己紹介をすれば、ロタールはその青い目を細めて笑った。 「そうかそうか、セシルにもお弟子さんが出来たのか。いやはや、誇らしいことよ」 「それで、叔父さん。この村で一体何が起きたんだ?」 セシルがそう聞けば、ロタールは少し間を置いて、話し始めた。 「水の使徒、ウォーマルが現れて襲ってきたのじゃよ。まるで、何かこの村に恨みがあるかのように」 「恨み、か……」 ロタールの言葉を聞いて、セシルはより一層顔を曇らせた。 ロタールはそれを見て察したのか、それ以上の話をしなかった。 「……そうだ、叔父さん。きっと、食べるものなくて困ってるだろ? ここにザンドラってやつがいて、その家を借りて寝泊まりするつもりなんだけど、叔父さんも来なよ」 「おお、あの元気な小娘のことじゃな。良かろう、幸いわしの家は残てるのでのぅ。ご飯だけもらっていくぞ」 「師匠のご飯は上手いんだぜ! おじさんが食べたらきっと、美味しさで爆発するかもな!」 レオの冗談に、ロタールは大笑いしながら「いい弟子を持ったものじゃ!」とセシルの肩を叩いた。 そうしていると、遠くから声が聞こえた。 ザンドラの声だ。 「セシル、レオ! 材料集めてきたぜ! おっ、ロタール爺さんじゃねぇか! 爺さんも食べていくか?」 「是非そうさせてくれ」 3人は村を見回りながら、ザンドラの家へと歩みを進めた。
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