第二章 深まる謎

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ザンドラの家へと入ると、セシルがザンドラに話しかける。 「ロタール叔父さんのこと、知ってるのか?」 「知ってるも何も、この村に来た時に、あたしを快く迎えてくれた、ただ1人の爺さんだよ!」 「ふぉっふぉっふぉっ! お主はあの時と何も変わらず元気じゃのぅ! いやぁ、安心したわい!」 ロタールが老人とは思えないほどの力で、ザンドラの背中を叩く。 だがザンドラは痛くもなんともないようだ。 「まぁ入れよ! 材料の準備は出来てるぜ、セシル!」 「ああ、夕飯は俺に任せろ! ロタール叔父さんもな」 「ああ。楽しみにしとるぞ、セシル」 セシルが夕飯を作っている間、レオはロタールと話をした。 ちなみにザンドラは「体を動かしてぇから走ってくる!」と言って勢いよく外へと出ていってしまった。 ロタールがレオに話しかけた理由は、最近のセシルの様子を知りたいかららしい。 「セシルは最近、その村ではどうなのじゃ?」 「皆に慕われてるよ! 強いし、頼りになるし、村の女性たちは、村の男よりも頼りになるし顔がいいって言ってたぜ!」 「おぉおぉそうじゃったか。いやぁ、変わらぬようで良かったわい」 聞きたいことはその1つだけだったのか、ロタールはそう言ったあと、窓の外を見ていた。 そんなロタールにレオは、ずっと気になっていたことを聞いた。 「なぁ、おじさん。師匠が俺らの村に来る前、何が起きたんだ?」 レオがそう聞くと、ロタールは困ったような顔をした。 「セシルは話しておらんのか?」 「ああ。ほとんどなんにも」 「じゃあ、話したくないということじゃ。セシルが隠そうとしていることを、わしの口から言うことは出来ん」 ロタールはそう言ったあと、「すまんの、レオ」と言ってレオの頭を撫でた。 「いや……確かにそうだな。ごめん、ありがとう」 「うむ。セシルのことに関しては、本人が喋るまで待つことじゃ。勿論、セシルの弟子なら出来るじゃろう?」 「ああ、当たり前だ! 舐めてもらっちゃ困るね。なんてったって、師匠の弟子なんだからな!」 レオがおちゃらけて言えば、ロタールは「おぉそうじゃった! すっかり忘れとったよ」と笑った。 そんな話をしている時、家の扉が勢いよく開かれ、ザンドラが帰ってきた。 「おぉ、おかえり、ザンドラ」 「あぁ! 夕飯は出来てるか?」 ロタールが言うと、ザンドラは上がった息を整えながらそう答えた。 「今出来たが、ザンドラは風呂に入ってからな」 「あー、分かったよ」 ザンドラは、すぐにでも夕飯が食べられないことに落ち込んだが、泣く泣くお風呂に入るらしい。 「はい、叔父さん」 「おぉ! こりゃまた美味しそうじゃのぅ! セシルお主、料理の腕も上がったようじゃの!」 「頑張って練習したんだ」 セシルは誇らしげにそう言った。 ロタールは夕飯を1口食べ、セシルの肩を叩き、「最高な味じゃ」と言ってウインクをした。 そんな時、ザンドラが風呂から上がったらしく、まだ湯気がたっている状態で、用意された夕飯を食べ始めた。 「うん! うめぇな! 流石セシルだ!」 そう言ってばくばくと食べるザンドラ。 何口か食べたあと、ロタールがレオとセシルとザンドラに言う。 「して、明日何をするつもりじゃ?」 「えっ? 何って……何が?」 セシルが動揺して聞き返せば、ロタールは分かっていたとでも言うように微笑んだ。 「明日、ウォーマルを倒しに行くじゃろう?」 「なんでそれを……」 流石のザンドラも、夕飯を食べる速度が遅くなっていた。 「レオ、お主の噂は聞いておる。そしてこの村に来るということは、ウォーマルを倒しに行くということだと思ってな。合ってたようで良かったわい」 そう言ってまた何口か夕飯を食べるロタール。 「止めはせんが、辛く苦しい戦いになるぞ。特にセシル。覚悟は、出来とるじゃろうな?」 特にと付け足した理由は、レオとザンドラには分からない。 だが、セシルには確かにしっかりと、ロタールの言葉の意味が分かった。 「ああ。覚悟はできてるよ。そりゃもう、ずっと前からな」 「そりゃ良かった。なら止めやせんよ。存分に、自分の力を発揮してこい、3人とも」 夕飯を食べ終わったロタールがそう言って、3人の肩を叩いて、自分の家へと戻っていった。 「……爺さんの言う通りだ。明日、あたし達は全力でウォーマルを倒しに行かなくちゃならない。そのためにも、作戦を練らねぇとな」 とっくに食べ終わっていたザンドラが、レオとセシルにそう声を掛ける。 「……ああ、そうだな。やろう」 「よし。まず、あたしが考えた作戦は……」 作戦会議は、深夜まで続いた。
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