13人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
「それより、なんでウォーマルは記憶を封印されていたんだ?」
ザンドラがセシルに聞くが、曖昧な答えしか返ってこなかった。
「俺にも分からねぇ……ただ、俺が姉ちゃんに触れた時、微かに闇の力を感じたんだ」
「闇……? 遠くの地区を支配してる闇属性の奴か?」
レオがセシルに聞き返すが、セシルは頭を捻るだけだった。
「まぁ、セシルの言ってることも、あながち間違いではないのかもな。闇属性なんてそうそういるもんじゃねぇからな。記憶を封印するほどの力となると、さらに絞られるしな」
ウォーマルを倒せば何か分かると思ったが、謎は深まるばかりで、何も分からなかった。
そんなことに頭を悩ませながらも、村に帰ってきた。
「おぉ、よぉ無事で帰ってきたのぉ」
そんな3人を、ロタールが出迎えてくれた。
「それで……セシル。ウォーマルは?」
ロタールの質問にセシルが俯けば、ロタールはそれだけで分かったらしい。
「……そうか。お前さんはよう頑張ったよ。村を追い出された時よりも、格段に強うなっとるわい。どれもこれも、傍の2人のおかげじゃろう」
ロタールはそう言って、レオとザンドラに目を向けた。
「これからも、セシルのことを支えてくれんか? レオ、ザンドラ」
「ああ、勿論だ! ロタール爺さん! あたしが守ってやるさ!」
「ちょっとザンドラ! 師匠は俺が守るの!」
「ふぉっふぉっふぉっ! 騒がしい仲間に恵まれたようじゃの、セシル!」
「……ああ。でも、最高の仲間だよ」
セシルはそう言って、ロタールに笑いかけた。
「さてと。ウォーマルを倒した記念に宴会を、と思ったが……どうやらそうはいかないようじゃ」
他の3人が不思議に思い、ロタールが見ている方向を見れば、そこには1人の人影があった。
その人影は立ち止まったと思いきや、口角を上げ、レオ達に弾を撃った。
咄嗟の判断で、ザンドラが雷の盾を出し、攻撃を防ぐ。
「っ! あいつっ……!」
「知ってるのか? ザンドラ」
セシルがザンドラに聞けば、ザンドラは頷いて、その名を言った。
「サンバダだ。あたしの故郷、ザタゼブル地区の指導者だったが……まさかあいつ……!」
ザンドラが、見たこともないような険しい顔をしている。
そんな時、サンバダの声が耳に届いた。
「ザンドラ! そして勇者御一行! 俺はお前らに、挑戦状を叩きつける! 拒否権はない! もし拒否しようものなら、雷で丸焦げになるだろうな!」
「どうやら、雷の使徒にされたようじゃ。きっと、本人の意志じゃないじゃろう」
ロタールがザンドラに優しく言うが、ザンドラはそんなこともお構い無しみたいだ。
「サンバダ! お前どこまで堕ちるつもりだ! お前を慕う人を、どれだけ裏切るつもりだ!!」
「おおザンドラ! まだ元気そうでよかったよ! お前との戦いが昨日のことのように思い出せるぜ! 周りを犠牲にしたお前の顔は、今も変わってねぇだろうなぁ?」
ザンドラの握り拳が、さらに強く握り締められる。
「お前の思い出の場所で待ってるぜ、可憐なお嬢さん!」
サンバダはそう言って、笑いながら去っていった。
「……ザンドラ」
ザンドラはサンバダがいた方向をただ見つめ、握り拳を作り続けていた。
「行くしかないよな、そうだろ、ザンドラ」
レオがザンドラにそう言えば、ザンドラは驚いたようにレオを見た。
「ああ、レオの言う通りだ。ザンドラ1人じゃ心配だからな」
「レオ、セシル……」
セシルがザンドラの肩を優しく叩けば、ザンドラは眉を八の字にして微笑んだ。
「ありがとうな、2人とも」
「あったり前だ!」
「俺らのことも頼ってくれよ?」
そんな3人を、ロタールは遠くから見ていた。
「……ロタール叔父さん」
「うむ。止めやせんぞ、セシル。存分に楽しんでこい!」
ロタールに背中を押されたセシルは、その言葉を聞いて、力強く頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!