第三章 解明への一歩

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勢いのみで家を出たものの、レオとセシルの2人はザタゼブル地区に来たのは初めてで、行くあても勿論無かった。 「久しぶりだな。こうやって行くあてもなく歩くのは」 「師匠と二人きりってのも、何だか懐かしいぜ」 2人はそんな会話を交わしながら歩いていると、道の横にある木が数本倒れているのを見た。 「これは……」 「ザンドラの仕業だろうな。木についた傷が似てる」 「ザンドラはいつここにいたんだろう……」 木についた傷を撫でながら、レオがそう呟く。 そんなレオに、セシルが元気付ける様に言った。 「まだそんな離れてないだろ。追いつくさ」 「……うん、そうだね」 辺鄙な道を少し足早に歩く2人。 その道は少し坂になっており、それを超えれば、目の前には街が広がっていた。 すごく発展している様子で、遠くからでも人が忙しなく動いているのがわかる。 「あの街で情報収集してみよう」 「……うん」 レオは街というものが初めてなのか、少し緊張した様子でその光景を眺めていた。 街に入れば、会う人誰もが歓迎してくれた。 「あら、旅人のお方? あそこにある酒場はすごく美味しいからオススメよ!」 「そこの旅人さん! こちらの宿に泊まっていかないかい?」 そんな皆の様子を、レオは物珍しそうに見回していた。 「どうした、レオ?」 「てっきり追い返されるかなって……でもいい人たちみたいでよかった」 セシルの問いに答えた後、レオはそう言って安堵した。 とりあえず、とセシルとレオの2人は、先程オススメされた酒場に行ってみることにした。 「美味しい料理も食べたいし、酒場なら情報も集まるかもしれないからな」 「うん、そうだね」 酒場への扉を開けば、酒を持った男たちがどんちゃん騒ぎをしているのが見えた。 セシルとレオの元に、酒場の店員であろう女性が近寄ってきた。 「こんにちは! 旅の方?」 「ああ。ここで何か食べたくて来たんだが、席は空いてるか?」 セシルが店員に問うと、店員は「もちろん! ついてきて!」と言って、奥へと歩いていった。 セシルとレオがついて行き、席に座ると、店員が「飲み物は何にする?」と聞いた。 「俺は水でいい。レオは?」 「えーっと……」 レオが何にしようか悩んでるところに、店員が声を掛ける。 「オレンジジュース、あるわよ」 「じゃ、じゃあそれでっ!」 レオが勢いよくそう答えると、店員は控えめに笑ったあと、奥の厨房へと走っていった。 セシルも少し笑っているところを見て、レオは顔をふくれさせた。 「子供っぽいって思ってんだろ、師匠」 「いやいや、思ってねぇよ。ただ……」 セシルはそこで言葉を止めた。 「ただ、なんだよ」 「大人になってきてるなぁっと思ってな」 「はっ? それどういう事だよ!」 レオが聞いても、セシルは「自分で考えな、お子ちゃまさん」とあしらう。 そんなセシルを、ぽこぽこと軽く殴るレオ。 久々に来た平和に、セシルは誰にも気付かれないように息を吐いた。
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