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村長の家に入ると、何とも香ばしい、美味しそうな匂いが鼻を掠めた。
「あら、いらっしゃい!料理出来てるわよ!」
「いつもごめんな、村長。助かるよ」
ザンドラがそう言えば、村長は「全然いいのよ!」と言って微笑んだ。
テーブルに並んでいるのは、丁度よく焦げ目がついた、大きなグラタン。
今いるのは5人だが、それ以上の量があるような、それほど大きいグラタンだ。
「さぁお食べ!沢山あるわよ!」
「張り切りすぎだよ村長」
ザンドラが笑って言うと、レオ、セシル、オルランドは「それでも足りないくらいだ」と見栄を張った。
全員が椅子に座り、「いただきます」と声を張った。
皆が熱々のグラタンを頬張っている時、村長がザンドラ以外の3人に話しかける。
「ザンドラと仲良くしてくれて、ありがとうね」
「いえ、いいんですよ。ザンドラも俺たちの大切な仲間ですし」
「師匠の言う通りだぞ!ザンドラは俺に技を教えてくれた。俺にとって、もう1人の師匠なんだ!」
レオが嬉しそうに話すと、村長は「あらあら」と言って控えめに笑い、ザンドラは照れを隠す為に、口いっぱいにグラタンを詰め込んだ。
「そう言えばずっと気になっていたんだが、お前たちは何故旅をしているんだ?」
オルランドにそう聞かれ、そういえば話していないことに気付いた。
「俺が住んでた地区にファブルっていう悪いやつがいたんだ。そいつに家族を奪われて………仇を取ったら、ヘルムレ地区の悪いやつが来て………流れに沿って来たら、こんなことになっちまった」
「ふむ………中々辛い経験をしてきたんだな」
レオが話した後、慰めるようにオルランドがそう言った。
「そして次は、サンバダを倒す。あたしはあいつに借りがあるんだ。必ず、返さないと」
「………ふむ。それならば俺もお供しよう。悪者は倒さねばならん」
オルランドがそう答え、ザンドラが「ありがとう」と微笑んで言った。
それを遮るように、村長が声をかける。
「本当に行くのかい?サンバダは………」
「分かってる。サンバダは洗脳されてるだけだって。本当はあんなのじゃないって、分かってる。ガツンと魔法を食らわせて、目を覚まさせてやるよ」
ザンドラがそう意気込んでも、村長は心配そうな顔をしたままだった。
やがて決心したのか、「そうかい」と呟いた。
「なら、今日はたっぷりと寝ないとね!それと、雷に有利な属性があるとはいえ、油断はしちゃいけないよ。サンバダはザタゼブル地区一の魔法使いさ。何か策はあるんだろうね?」
村長の最もな言葉に、皆言葉を詰まらせた。
次に声を出したのは、オルランドだった。
「俺が皆に色々教えてやろう。レオには新しい技を、セシルとザンドラは元がよく出来てるから、雷属性の対処法を教えよう」
「新しい技?!どんなの、どんなの?」
レオがオルランドにそう言って詰め寄るが、それを村長が止める。
「特訓はまた明日だね。今日はもう暗い、泊まれる家に案内するから、着いておいで」
村長がそう言えば、レオは不服そうだが、素直にそれに従った。
村長に案内され、各自床に就いた。
腹一杯に食べ物を詰め込んだ、レオ、セシル、ザンドラ、オルランドの4人は、明日の特訓の為に、ぐっすりと眠りについた。
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